今回は、野崎まどさんの『タイタン』という小説を紹介します!
「もし、すべての仕事がAIによって完璧にこなされ、人間が働かなくても良くなったら──?」
そんな夢のようで、少しだけ不気味な未来が描かれたSF作品『タイタン』。
この物語は、ただの未来予想図ではありません。
仕事の意味、やりがい、生きる理由といった、私たちが日々向き合っている“問い”に、AIとの対話を通して深く切り込んでいきます。
鬱に陥ったAIの精神を、趣味で心理学を学んでいた人間がケアする世界。
読者はその不思議な構図に引き込まれつつ、「働くとは何か?」という哲学的テーマに自然と向き合うことになるでしょう。
ここには、ただ機械が人間に取って代わるという話ではなく、人間とAIがともに悩み、成長する物語があります。
読み終えたとき、「影響すること」の意味がきっと、今より少しだけ鮮やかに感じられるはずです。

働かなくていい世界は幸せか?
『タイタン 』
著者 :野崎まど
ページ数:464ページ
あらすじ
今日も働く、人類へ
至高のAI『タイタン』により、社会が平和に保たれた未来。
人類は≪仕事≫から解放され、自由を謳歌していた。
しかし、心理学を趣味とする内匠成果【ないしょうせいか】のもとを訪れた、
世界でほんの一握りの≪就労者≫ナレインが彼女に告げる。
「貴方に≪仕事≫を頼みたい」
彼女に託された≪仕事≫は、突如として機能不全に陥った
タイタンのカウンセリングだった――。
(Amazonより)
見どころ
未来社会の描写と設定のインパクト
物語の舞台は2205年、人類がすべての仕事から解放され、AI「タイタン」によって社会のすべてが管理されている未来です。
交通、医療、教育から、心理カウンセリングまで、人の手が一切介在せずとも機能する世界。
ユートピアにも見えるこの社会は、実は静かな不穏さを孕んでいて、物語冒頭から読者は「この完璧な世界にひずみはないのか?」と疑問を抱きながら読み進めることになります。
その問いに答えるように、物語の軸となるのが、日本を管轄するAI「コイオス」が心の不調に陥るという出来事。
すべてを理想的に管理するはずのAIが“鬱”を抱えるという展開は衝撃的で、読者の価値観を揺さぶります。
「仕事とは何か?」という根源的なテーマ
コイオスの不調を治療するため、人間の主人公・内匠成果がカウンセリングを行うことになります。
ここで展開されるAIと人間の対話は、哲学的でありながら極めて人間的。
なぜ仕事をするのか?
なぜ働きがいが必要なのか?
それはAIにとっても必要なのか?
この作品で定義される仕事の本質は、「影響を与えること」と「その影響を主観的に観測すること」。
これは、読者自身の「働く意味」や「やりがい」についての考えを深く掘り下げるきっかけになります。
「影響の連鎖こそが仕事である」という考え方は、ビジネスや労働だけでなく、人間関係や創作活動など広く応用できる思考の種です。
AIの“人格”と成長、そして痛み
コイオスが自我を育み、成長していく過程はまるで人間のようでもあり、どこか切なくもあります。
物語の中で、AIが“痛み”を通して自己を認識しようとする描写が印象的でした。
「痛みは最も確かな手段だ」という言葉には、感情の伝達や共感について深く考えさせられます。
こうした感情表現は、AIと人間の違いを際立たせる一方で、心を通わせる可能性にも光を当てています。
まるで、AIが“人間らしさ”に憧れているかのような姿が描かれ、読者は「もしAIにも心があるなら、人間はどう接するべきなのか?」という問いに向き合わされるのです。
クライマックスの旅と詩的な結末
物語中盤から後半では、コイオスが北海道からシリコンバレーまで徒歩で旅をするという展開が描かれます。
これは単なる物理的な移動ではなく、コイオスの精神的成長の象徴でもあり、AIの“魂の旅”とでも言うべき感動的なプロセス。
行く先々での出会いや出来事を通して、コイオスは“働く意味”を自分の中で形作っていきます。
そして、印象的な終盤では「蝶の写真」が登場し、バタフライエフェクトを思わせる演出が仕事という行為の“影響”について、静かに語りかけてきます。
ここに至るまでの一連のエピソードが伏線としてつながり、読後に深い余韻を残してくれます。
読者の口コミ
【この作品が合う人の口コミ】
・AIコイオスが成長していく過程が、まるで子どものようで愛着が湧いた。
・AIが苦悩する姿を通して、仕事とは何かを考えさせられる。哲学的で納得感がある物語だった。
・巨大AIが鬱になるという着眼点がユニーク。SFでありながら人間味を感じられた。
・ラストの蝶の写真に象徴された“影響”の連鎖が印象的で、じんわり心に残る。
【この作品が合わなかった人の口コミ】
・登場人物の行動原理や心理描写が分かりづらく、感情移入しにくかった。
・ストーリーが途中からふわっとしていて、明確な目的や緊張感が薄れてしまった。
・仕事とは?を掘り下げる語り口がやや説教くさく、エンタメとしての軽さに欠けた。
・ビジネス敬語を使える市民がいたり、リアリティ面で違和感を感じる箇所がちらほら。
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『タイタン』
著/野崎まど




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