母の手記が導く予測不能なミステリー『スピーチ』あらすじ!母親の異常性が際立つイヤミスの傑作とは?

今回は、まさきとしかさんの『スピーチ』という小説を紹介します!

「この母親、常軌を逸している…」
家族という閉ざされた空間の中で育まれた、歪んだ愛情と理解不能な心理。
その異様さが、じわじわと心に効いてくる。

物語は、札幌で起きた猟奇的な殺人事件から始まる。
そこから、過去に道内で起きた未解決事件が次々と浮かび上がり、捜査は複雑に絡み合っていく。

登場人物は増え、時系列は入り組み、迷路に迷い込んだような感覚になる。
どこまでが真実で、どこからが狂気なのか。
ページをめくる手が止まらない。

そして何より印象に残るのが、物語の合間に挿入される「母親の手記」
その文章は、理屈が通っているようでどこかズレていて、感情があるようで空っぽ。

読んでいるうちに、「この人は本当に狂っているのか?それとも…」と、理解できないことへの不安がじわじわと広がってくる。

読後にスッキリすることはない。
むしろ、モヤモヤとした感情が残り続ける。

でも、その不快さこそが、この作品の魅力だと思う。
イヤミスの醍醐味を、これでもかというほど味わえる一冊。

母親の異常性が際立つイヤミスの傑作とは?
『スピーチ』

著者:まさきとしか
ページ数:424ページ

あらすじ

札幌、豊平川の川岸で見つかった女性の遺体。

〝寄り添い型〞の刑事、天道環奈と、 その上司であり〝人の不幸が見たい〞緑川ミキは事件を追う。

黒い粘着テープで両目を塞がれた物言わぬ彼女に、 あの夜、一体何があったのか。

飲み会帰りかもしれない、不倫をしていたのかもしれない、 夫もパート仲間も、本当の彼女のことを何もしらない。

しかし─ 。

人には誰にも〝言い分〞がある。

被害者にも─ 犯人にも。
(Amazonより)

見どころ

母という存在の異質さと恐怖

読んでいて何度も思う。「この母親、何かがおかしい」
でも、言葉にしようとするとうまく言い表せない。

まさきとしかさんの作品にたびたび登場する“愛せない母親”は、今作でも強烈だった。
常識では理解できない言動を繰り返し、周囲を振り回す。

その存在は、ただの家庭内の問題ではなく、物語全体の不穏さを象徴する“核”になっている。

特に印象に残ったのが、物語の途中に挿まれる「母親の手記」
感情があるようで空っぽで、正しさを主張しているようでどこか歪んでいる。

読んでいるうちに、「この人は本当に狂っているのか?それとも…」と、理解できないことへの不安がじわじわと広がっていく。

複雑に絡み合う殺人事件と時系列の迷宮

物語は、札幌で発見された女性の遺体から始まり、8年前、15年前に道内で起きた過去の殺人事件へとつながっていきます。

事件の関連性を探る捜査は、時系列が入り組んでおり、読者は過去と現在を行き来しながら真相に迫ることに。

この構成が非常に巧妙で、読み進めるほどに「この人物は過去の事件とどう関係しているのか?」「この証言は本当なのか?」と疑問が積み重なっていく。

登場人物も徐々に増えていくため、読者には集中力と記憶力が試される展開ですが、それがまた読み応えにつながっていると思います!

理解できないという恐怖

この作品の最大の恐怖は、「犯人の動機が理解できない」という点。

多くのミステリーでは、犯人の動機が明かされることで読者は納得し、物語が完結します。

しかし『スピーチ』では、犯人の語る理由がどこか空虚で、読者は「本当にそれが理由なのか?」と疑問を抱き続ける。

その「わからなさ」が、読者の心に不安と恐怖を植え付けます。

人は理解できないものに対して、無意識に「自分が納得できる理由」を当てはめようとしますが、それすら拒絶されるような感覚。

だからこそ、ページをめくる手が止まらない。

読後に残る“モヤモヤ”と“ざわざわ”

物語の終盤、予想を裏切る急展開が待ち受けています。

伏線が回収されると同時に、「それでも納得できない」「救いがない」と感じる読者も多いでしょう。

エピローグに至っては、さらにダークな余韻を残し、読後の「スッキリ感」とは無縁。

しかしその「モヤモヤ」こそが、著者の醍醐味。
人間の心の闇、家族という閉ざされた空間の中で生まれる歪み、そしてそれが事件へと発展してしまう恐ろしさ。

読者は、物語を読み終えた後も、しばらくその世界から抜け出せなくなります。

読者の口コミ

【この作品が合う人の口コミ】

・読後にモヤモヤが残るけど、それがこの作品の魅力。人間の闇を描くのがうますぎる。

・母親の異常性がリアルすぎてゾクッとした。イヤミス好きにはたまらない展開でした。

・複雑な時系列と伏線が見事。一気読みしてこそ味わえる緊張感が最高。

・〈母の手記〉が怖すぎる。誰が真実を語っているのか分からない不安がクセになる。

【この作品が合わなかった人の口コミ】

・結末が予想外すぎて納得できなかった。スッキリした読後感を求める人には向かない。

・登場人物がみんな身勝手で感情移入できなかった。誰にも共感できないのがつらい。

・時系列が複雑すぎて混乱した。もう少し整理されていたら読みやすかったかも。

・母親の描写が過激すぎて不快だった。読んでいて気分が重くなった。

その他の人気作品

レッドクローバー

東京のバーベキュー場で起きたヒ素による大量殺傷事件。

記者の勝木は、十数年前の北海道灰戸町家族毒殺事件を思い出す。

家族が死んだ居間で寛ぎカップラーメンを啜っていた生き残りの少女、赤井三葉が〝また〟殺したのではないか。

三葉の行方を追い勝木は北へ向かうが――。「みんな死ねばいい」。

灰戸町の女たちの怒りの連鎖が、新たな悲劇を産み落とす。
(Amazonより)

あの日、君は何をした

北関東の前林市で平凡な主婦として幸せに暮らしていた水野いづみの生活は、息子の大樹が連続殺人事件の容疑者に間違われて事故死したことによって、一変する。

深夜に家を抜け出し、自転車に乗っていた大樹は、何をしようとしていたのか――。

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無関心に見える妻の野々子に苛立ちながら、母親の智恵は、必死で辰彦を探し出そうとする。

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(Amazonより)

あなたが殺したのは誰

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時は遡り、90年代初頭。北海道の鐘尻島では巨大リゾート「リンリン村」の建設が頓挫し、老舗料亭「帰楽亭」の息子、小寺陽介は将来に不安を感じていた。

多額の借金をして別邸を建てた父は大丈夫なのか。そんな折、リンリン村の鉄塔で首つり死体が発見される。

バブルに翻弄される北海道の離島と現在の東京。

二点を貫く事件の驚くべき真相とは。
(Amazonより)

読んでみた感想(ネタバレ注意)

読み始めてすぐに感じた違和感…。

この厚さで、もう事件解決?
いやいや、それはさすがにないよね?
そう思いながら読み進めていくと案の定、後半でぐいっと引き込まれた。

似たようでまったく違う二つの家族に翻弄され、気づけば作者の掌の上でコロコロされてた。

環奈の心の声に「それだけで?」と返したくなる場面もあって、読者としての自分も物語に巻き込まれていく。

緑川警部補の言葉が少しずつ回収されていく過程は、胸がざわつき、壊れた親子関係に向き合うたび、気持ちが沈んでいくのに、続きが気になる。

そして、エピローグ。あの不快さ。

著者らしい「イヤミス」の醍醐味が詰まっていて、読後に残るのはスッキリじゃなくて、モヤモヤとざわざわ。

イヤミス嫌いには向かないかも?

緑川と環奈のコンビにはまた会いたい。
この二人の距離感とテンポが最高で、次回作があるなら迷わず手に取ると思う。
まさきとしかさん、やっぱりすごい。

読者を振り回す手腕、今回も見事でした!

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『スピーチ』
著者:まさきとしか

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