今回は、くどうれいんさんの『スノードームの捨てかた』という小説を紹介します!
「捨てるって、こんなにも難しいことだったっけ?」
ある日ふと、部屋の片隅に置かれたままのスノードームを見つめながら、そんなことを思った。
それは、ただのガラスの置物ではなく、過去の記憶や感情がぎゅっと詰まった“時間のかたまり”だったのだ。
くどうれいんさんの短編集『スノードームの捨てかた』は、そんな“捨てられないもの”を抱えた人たちの、静かで切実な物語を描いた一冊。
アラサー世代の女性たちが直面する、恋愛、友情、孤独、そして自分自身との対話。
どの物語も、派手な展開はないのに、読後には心の奥にそっと触れてくるような余韻が残る。
「何かを手放すこと」は、「何かを始めること」でもある。
そんな気づきをくれるこの短編集を、あなたもそっと開いてみませんか。

アラサー女性の心に響く6つの物語
『スノードームの捨てかた』
著者 :くどうれいん
ページ数:192ページ
あらすじ
10年後に思い出す。そんな日は突然やってくる。
『わたしを空腹にしないほうがいい』『うたうおばけ』『湯気を食べる』がロングヒット&話題沸騰!!
ままならない人生に巻き起こる、心ざわつく悲喜こもごも――。
エッセイで日常のシーンを鮮やかに切り取り掬い上げてきたくどうれいんが描く、風味絶佳な初の小説作品集。
(Amazonより)
見どころ
友情と喪失の儀式
婚約破棄された友人を囲む女子3人の夜。
酔った勢いでスノードームを埋めるという突飛な行動は、単なる悪ノリではなく、過去との決別を儀式化することでしか癒せない痛みを象徴しています。
スノードームという“閉じ込められた記憶”をどう扱うかという問いは、読者自身の記憶や感情にもリンクしてきます。
友情の温度、喪失の重さ、そして“捨てる”という行為の意味が、静かに胸に迫ります。
憧れと違和感のあいだで
ヨガ教室で出会ったようこさんという女性に惹かれる主人公。
彼女の“秘密”を知ったとき、自分の感情の輪郭がぼやけていくような不安定さが描かれます。
恋愛とも友情ともつかない関係性、そして「自分はどうしたいのか」がわからないまま流されていく感覚。
20代後半という年齢特有の、“選ばなければならない”という焦燥感がにじみ出ています。
記憶とモノの境界線
別れた恋人からもらった指輪を捨てられずにいる主人公・まみ子。
彼女が出会う“しゃがみ込む男”とのやりとりは、モノに宿る記憶と、それを手放すことの難しさを浮き彫りにします。
「捨てることを物語にしたくない」という台詞が象徴するように、過去を“演出”せずに終わらせることの難しさと潔さが交錯する一編です。
川というモチーフも、流れ去るものと残るものの対比として印象的です。
見えないものを見つめる視線
美術館の監視員として働く女性が、ある日出会った男性とのやりとりを通して、自分の存在の輪郭を確かめようとする物語。
唇が降ってくる映像作品という奇妙なモチーフが、現実と幻想の境界を曖昧にし、読者に不穏な余韻を残します。
恋の予感のようでいて、どこかズレている。
「誰かに見られること」と「自分が見ること」の非対称性が、静かに心をざわつかせます。
普通の中に潜む不穏
唯一の男性視点で描かれる本作では、結婚を控えた彼女から「直してほしいところを教えて」と言われた主人公が、何も思いつかずに戸惑います。
“何もない”ことの不気味さ、そして“普通”の中に潜む不穏さがじわじわと浮かび上がります。
湯気のように形を持たない違和感が、読者の心にもまとわりついて離れません。
過去と現在をつなぐ額縁
仕事を辞め、虚ろな日々を送る女性が、祖父の絵を額装しようとする物語。
画材屋でのやりとりを通して、過去の記憶と今の自分をつなぐ「窓」が開かれていきます。
何気ない会話の中に、人生の節目のような瞬間がそっと差し込まれており、読後には静かな希望が残ります。
タイトルの「窓」が象徴するのは、他者との関係性、未来への視線、そして自分自身を見つめる視点でもあるのです。
全体を通して感じること
この短編集に共通するのは、「捨てる」「離れる」「終わらせる」というテーマです。
しかしそれは決してネガティブなものではなく
“手放すことでしか得られない自由”
“次に進むための余白”を描いています。
くどうれいんさんの文章は、エッセイで培われた観察眼と感性が活かされており、どの物語も詩のように静かで、でも確かに心に残る。
読後、ふと自分の部屋の片隅にある捨てられない何かに目がいくかもしれません。
そして、それをどう扱うかを考える時間こそが、この作品集の余韻なのだと思います。
読者の口コミ
【この作品が合う人の口コミ】
・捨てるというテーマが、自分の経験や感情と重なって深く刺さった。
・日常のささやかな違和感や感情の揺れに共感できた
・登場人物の世代が自分と近く、リアルなやりとりに頷きながら読めた。
・淡々とした語り口の中にある静かな痛みや余韻が心に残った。
【この作品が合わなかった人の口コミ】
・登場人物の行動や感情が理解しづらく、共感できなかった。
・物語に大きな展開やオチがなく、読後の手応えが薄かった。
・淡々としすぎていて、感情移入しづらかった。
・不穏さやモヤモヤが強く、今の自分には少し苦しかった。
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『スノードームの捨てかた』
著/くどうれいん



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