今回は、米澤穂信さんの『栞と噓の季節』という小説を紹介します!
「図書室で見つけたたった一枚の栞が、こんなにも深く、遠くまで届くとは思わなかった。」
米澤穂信の『栞と嘘の季節』は、ささいな違和感から始まり、登場人物たちの心の奥に秘められた嘘と感情を少しずつ解きほぐしていく青春ミステリー。
華やかでも激しくもないけれど、静かに刺さるような痛みと緊張感が、この物語には確かに息づいています。
毒の花が押し込まれた栞をきっかけに展開する“日常の謎”、そして交差する人間関係。
謎を追いながらも、どこか踏み込みすぎない登場人物たちの距離感に、読者は自分自身の記憶や感情を重ねてしまうかもしれません。

毒入り栞が紡ぐ青春の嘘と真実
『栞と噓の季節』
著者 :米澤穂信
ページ数:448ページ
あらすじ
高校で図書委員を務める堀川次郎と松倉詩門。
ある放課後、図書室の返却本の中に押し花の栞が挟まっているのに気づく。
小さくかわいらしいその花は――猛毒のトリカブトだった。
持ち主を捜す中で、ふたりは校舎裏でトリカブトが栽培されているのを発見する。
そして、ついに男性教師が中毒で救急搬送されてしまった。
誰が教師を殺そうとしたのか。次は誰が狙われるのか……。
「その栞は自分のものだ」と嘘をついて近づいてきた同学年の女子・瀬野とともに、ふたりは真相を追う。
(Amazonより)
見どころ
絶妙な人間関係の描写と距離感
本作最大の魅力の一つは、堀川と松倉の関係性。
親しいようでいて、互いにすべてを晒さない微妙な距離感が絶妙です。
「友人だけど何もかも知っているわけではない」という希薄でありながら深い繋がり。
この絶妙なバランスが、物語全体の空気を支えており、読者に「人間関係のリアル」を強く印象づけます。
ふたりのやりとりは、どこかシニカルで皮肉めいた言葉選びが心地よく、登場人物同士の感情のぶつかり合いではなく、“言外に伝わる思い”が静かに響いてきます。
特に印象的なのが「割のいいバイトを始めていた」ことが、前作での堀川の思いに対する無言の返答になっている点。
台詞に頼らない感情の描写が非常に上手く、読者の想像力を刺激します。
読者を翻弄する“嘘”の連鎖
物語の根幹をなすのは「嘘」。
登場人物は皆、何かしらの嘘を抱えており、それが巧みに物語を揺さぶります。
一見信頼できるように見える堀川でさえも、100%の語り手ではない。
この“不完全な語り”が読者に不安を与え、ページをめくる手が止まらなくなります。
嘘が明かされていく過程はまるで連鎖反応。ある一人の嘘が別の人物の嘘を暴き、それがまた別の真実を引き出す構造。
登場人物全員が「嘘をつく理由」を持っている点が、単純なミステリではなく、社会性と心理性を持ち込んだ作品としての深みを生んでいます。
高校生らしからぬ繊細な感性と推理力
堀川と松倉をはじめとする高校生たちは、大人顔負けの観察力と洞察力を持っています。
とはいえ、それは“万能”ではなく、彼らなりの未熟さも含んだもの。
その絶妙なバランスがリアルで、生々しさすら感じます。
本格的な捜査ではなく、人づてに話を聞いたり、言葉の端々の違和感から真相に迫っていく手法も本作ならでは。
「高校生だからこそ見える範囲」「届く距離感」で描かれる事件は、世界がまだ不安定な彼らの心情とリンクしていて、深い共感を呼びます。
毒入りの“栞”が象徴する切り札
物語の中心にある“トリカブトの栞”は、ただの小道具ではなく、登場人物たちの切実さや焦燥、そして「人を傷つける力の象徴」として描かれています。
その一方で、“切り札”として手に入れながらも使われなかったことで、彼ら自身の成長や選択の尊さが浮かび上がる構成が秀逸。
「使ったら最後、二度と戻れない一線」を越えなかったことに、思春期の痛みと希望が滲んでいて、この“毒”をめぐる物語が単なるサスペンスに終わらない理由でもあります。
ビターで余韻の残るエンディング
謎が解けて終わるわけではなく、どこか余白を残したまま幕を閉じるラストも印象的です。
事件のすべてが明かされるわけではなく、“何も言う必要もなかった”という堀川の語りにあるように、語らないことで伝わる感情に重みがあります。
その余韻が、読者にとって「続編を読みたい」「もっと彼らの世界を覗いてみたい」という気持ちを呼び起こし、シリーズとしての魅力にも繋がっていると感じました。
読者の口コミ
【この作品が合う人の口コミ】
・毒入り栞というテーマが日常の謎に緊張感を与えていて、読書が止まらなかった。
・高校生らしからぬ鋭い会話と推理が心地よく、読後の余韻が深い。
・伏線回収が見事で、登場人物の嘘が少しずつ明かされる展開が面白い。
・堀川と松倉の距離感が絶妙で、探偵でも親友でもない関係性が魅力的。
【この作品が合わなかった人の口コミ】
・嘘が多すぎて、誰を信じて読めばいいのか分からず疲れた。
・高校生の言動が現実離れしていて、感情移入しづらかった。
・登場人物が多く、誰が誰なのか混乱してしまった。
・話の展開が淡々としていて、盛り上がりに欠けると感じた。
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『栞と噓の季節』
著者:米澤穂信



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