本屋大賞2025ノミネート『人魚が逃げた』レビュー葛藤と成長を描く心温まるストーリー

今回は、青山美智子さんの『人魚が逃げた』という小説を紹介します!

話題作『人魚が逃げた』は、アンデルセンの「人魚姫」をモチーフにした、青山美智子さんならではの幻想的なヒューマンドラマです。

銀座の街角で「人魚を探す王子」と出会った5人の男女たちの物語が、一見独立したエピソードとして展開されながらも、少しずつつながりを見せていく巧みな構成が特徴的。

この作品は、迷いと葛藤を抱える登場人物たちが王子との邂逅を通じて小さな一歩を踏み出す姿を温かく描いており、読者に深い感動と共感をもたらしてくれます。

葛藤と成長を描く心温まるストーリー
『人魚が逃げた』

著者  :青山美智子
ページ数:240ページ

あらすじ

ある3月の週末、SNS上で「人魚が逃げた」という言葉がトレンド入りした。

どうやら「王子」と名乗る謎の青年が銀座の街をさまよい歩き、「僕の人魚が、いなくなってしまって……逃げたんだ。この場所に」と語っているらしい。

彼の不可解な言動に、人々はだんだん興味を持ち始め――。
そしてその「人魚騒動」の裏では、5人の男女が「人生の節目」を迎えていた。

12歳年上の女性と交際中の元タレントの会社員、娘と買い物中の主婦、絵の蒐集にのめり込みすぎるあまり妻に離婚されたコレクター、文学賞の選考結果を待つ作家、高級クラブでママとして働くホステス。

銀座を訪れた5人を待ち受ける意外な運命とは。
そして「王子」は人魚と再会できるのか。
そもそも人魚はいるのか、いないのか……。
(Amazonより)

見どころ

物語の中心にある「出会いと変化」

物語は、現実世界の銀座で展開される中に、童話の要素が混ざり合い、登場人物がその影響を受けて変わっていくという形式が取られています。

5人の登場人物それぞれが王子と出会うことで、小さくも大きな変化を経験します。

この変化の過程が、読者に「もし自分が彼らの立場だったらどうするだろう?」と考えさせる魅力的な仕掛けになっています。

例えば、夜の街で働く理世と年下の恋人・友治は、お互いに引け目や遠慮から本音をぶつけ合えず、長くすれ違い続けていました。

しかし王子との邂逅を通じて、彼らは自分たちの本音や相手への気持ちを改めて直視し、未来への一歩を踏み出します。

このような「再起」や「自分との対話」が物語全体に共通するテーマとして描かれています。

多彩なキャラクターとその視点

各キャラクターの物語は個別でも楽しめますが、彼らの人生が重なり合い、物語全体が一つの大きなパズルのように組み上がる様子が秀逸です。

友治と理世

年齢差に苦しみ、互いに本当の自分を見せられない不器用なカップル。

伊津子と娘・菜緒

娘が独立し、母親としての役割に一区切りをつける場面で自分自身を見つめ直す母。

渡瀬

離婚後に新たな人生を探し求める元会社員。

絵画への情熱を再確認し、孤独から希望を見出す姿が印象的です。

日下部と多恵

作家として結果を待つ日下部と、彼を支えながらも自身の人生について考える多恵の姿が描かれます。

これらのキャラクターは、どれも「迷い」と「成長」の過程を丁寧に描かれており、読者が自分自身に投影しやすくなっています。

物語の構成と伏線

物語は各章で異なるキャラクターの視点を描きますが、次第にそれぞれがつながり合っていきます。

例えば、銀座のクラブのシーンやカフェでのエピソード、さらには通りすがりの会話までが、一見すると何気ない描写に見えますが、後から振り返るとそれぞれが重要な伏線であることが分かります。

終盤に向けて、王子の正体や人魚を探す理由が明かされる場面では、何重にも張られた伏線が解かれ、物語全体の完成度の高さを再認識させられます。

深いテーマ性『人魚姫』を再解釈

本作は、アンデルセンの『人魚姫』をモチーフにしていますが、その視点を新しくすることで、現代的なテーマを投げかけています。

「犠牲」「すれ違い」「後悔」「再生」といった要素が、人魚姫の物語と本作の登場人物たちの物語の中に巧みに織り込まれており、読者に「人と人が本当に分かり合うとはどういうことか」を問いかけてきます。

さらに、青山さんの言葉には、「過去を受け入れることの大切さ」と「未来への希望」が随所に込められており、どの章にも読者を励ますメッセージが散りばめられています。

読者の口コミ

【この作品が合う人の口コミ】

・一歩が踏み出せない人におすすめ

・スラスラ読めたのがいい

・1つ1つのストーリーが繋がっていて読み進めて行くうちに面白くなる

・おもしろいぐらいに細かい所が素晴らしい

【この作品が合わなかった人の口コミ】

・ダラダラとした話


・よくわからなかった

・メルヘンチック過ぎて


・意外性はなくてがっかりした

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