今回は、湊かなえさんの『未来』という小説を紹介します!
10周年の集大成作品
この作品は、湊さんのデビュー作『告白』から10周年を記念して執筆された特別な一冊であり、湊さん初となる後書きが収録されています。
それだけでも注目の価値がありますが、内容そのものも非常に深いテーマを孕んでおり、読者に多くのことを考えさせてくれる作品でした。

『未来』が紡ぐ人間ドラマ
『未来 』
著者 :湊かなえ
定価 :858円(税込)
発売日 :2021.08.05
ページ数:488ページ
あらすじ
「こんにちは、章子。私は20年後のあなた、30歳の章子です。あなたはきっと、これはだれかのイタズラではないかと思っているはず。だけど、これは本物の未来からの手紙なのです」
ある日突然、少女に届いた一通の手紙──。
家にも学校にも居場所のない、追い詰められた子どもたちに待つ未来とは!?(Amazonより)
見どころ
物語構成と視点の多様性
『未来』は単純な時系列で進むストーリーではなく、10歳の章子のパートと、それぞれの視点でエピソードが進んでいきます。
亜里沙の視点
章子の親友、亜里沙が抱える心の葛藤や彼女自身の物語が語られます。
親友の視点を通じて明子の行動や感情がさらに掘り下げられ、彼女の孤独や希望が際立ちます。
担任の先生の視点
章子たちの学校生活をより広い視点から描いています。
教師としての葛藤や、生徒たちに寄り添いきれない自身への苦悩が印象的で、学校という環境の複雑さが浮き彫りになります。
父親の視点
章子が知らなかった父親の秘密や、彼の決断が家族に与えた影響が描かれます。
これにより章子の家庭の真実が明らかになり、作品全体の謎が解き明かされる重要なパートです。
こうした構成によって、単純な「未来からの手紙」の物語ではなく、多層的で深い人間ドラマが展開されます。
手紙での対話の面白さと成長
物語の軸となるのは、10歳の章子と30歳の未来の章子との「手紙のやりとり」です。
10歳の章子は、未来から届いた手紙を受け取り、それに対して純粋な興味と大きな疑問を抱きます。
その反応は、彼女の子供らしい無垢な心をよく表しており、未来の自分に返事を書く様子はどこか微笑ましくもあります。
やがて章子の生活に辛い経験が重なり、彼女の心情は時と共に変化していきます。
大人への成長過程での揺れる感情や思春期特有の複雑な思いが、未来の自分に宛てた手紙の内容にも表れ、その言葉からは、未来への疑念や自分自身への不安、さらには反抗心が滲み出ており、読者はその変化を通じて章子の心の揺れや葛藤をリアルに感じるでしょう。
物語が進む中で、章子は少しずつ未来の自分や運命を受け入れるようになります。
彼女が手紙を通じて紡いだ対話は、最終的には未来への希望を見出す道筋となり、章子自身の成長を感じさせるものとなっています。
その姿には力強さがあり、読者はまるで彼女の人生をそばで見守っているかのような感覚に包まれます。
人間関係とテーマの深さ
『未来』では、家庭や学校、友人関係といった人間関係の複雑さが徹底的に描かれています。
特に印象に残るのは、章子の家庭内。
母親が心の病を抱えているため、新しい家庭を築く中で多くの困難に直面します。
その選択が幼い章子にどれほどの影響を与えたのか、その重みは計り知れません。
また、新しい父親の存在や、母親が美人であるがゆえに巻き込まれるトラブルが描かれ、現実的で厳しい家庭環境の様子が読者の心に深く刺さります。
章子にとって、家庭という場が安らぎの場所ではなくなっていく様子が、痛ましくも繊細に描かれています。
一方で、学校での章子の孤独もまた、心に響くものがあります。
誰しもが抱えたことのある「居場所のなさ」という感覚が、章子の姿を通して非常にリアルに描かれています。
そんな中で、友人との出会いが彼女にとってどれほど救いとなったのか、その関係性が丁寧に紡がれていきます。
また、この物語では小さな行動や言葉が他者にどのような影響を与えるのかが、緻密に描かれています。
例えば、教師の無自覚な一言が子供たちに与える打撃や、親の何気ない決断が子供の未来を左右する様子には、胸が痛みます。
それらの描写を通じて、人間関係の脆さや繋がりの重要性が強く浮き彫りにされており、それが本作のテーマのひとつとして深く刻まれています。
名言に込められたメッセージ
作中の名言や、後書きに込められた湊かなえさんのメッセージも、この作品の魅力を語る上で外せません。
「人の数だけ暮らしがあり、人生がある。他人の人生に自分の物差しを当てて口を出すことはとても恥ずかしい行為なのだ」という一文に触れたとき、自分自身の視野がいかに狭かったかを痛感させられました。
この言葉は、他人を自分の基準で判断しがちな日常に警鐘を鳴らし、他者の生き方を理解し尊重する大切さを改めて考えさせます。
特に、自分の常識や価値観が必ずしも普遍的であるわけではないと気づかされる点で、この一文は読む者の心に深く響きました。
後書きには「人は見たいものしか見ない」という鋭い洞察が書かれており、これもまた印象的でした。
読者に問いかけるその視点は、物語を超えて、私たち自身の生き方や未来を見つめ直す契機となります。
作品を読み終えた後、湊さんの言葉を胸に自分の「未来」とは何かを考える時間を持つことの意味を強く感じました。
この後書きは、単なる物語の補足を超えた深いメッセージを内包しており、読者にとって特別な余韻を残します。
読者の口コミ
【この作品が合う人の口コミ】
・辛い展開が続くが、何度も泣ける
・小学生〜中学生女子の描写もリアリティがあると感じました
・読みだしたら止まらない
・途中でやめることができないテンポ感
【この作品が合わなかった人の口コミ】
・毒親と毒された娘たちの不幸自慢てワンパターン
・前作の期待を超えてこなかった
・読みやすいが、もう少しテンポアップした展開が欲しい
・少しやり過ぎ感があるので苦手
その他の人気作品
告白

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」
我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。
(Amazonより)
Nのために

超高層マンションの一室で、そこに住む野口夫妻の変死体が発見された。
現場に居合わせたのは20代の4人の男女。
それぞれの証言は驚くべき真実を明らかにしていく。著者初の純愛ミステリー。
(Amazonより)
C線上のアリア

育った家がごみ屋敷となり果て、久しぶりに戻った美佐。
家を片づけていく過程で金庫を発見する。
そこからひもとかれる、家族にさえ言えなかった叔母の秘密とは……。
(Amazonより)
ネットで簡単、本&DVD 宅配買取のネットオフ!
家に本が溢れかえってる人、常に新しい本を買っては売る人、そもそも出品作業や、売りに行くのが面倒な人。
ネットオフなら自宅で段ボールに詰めるだけ。
後は宅配業者が自宅に集荷に来て、全てお任せ!
気になる方はチェック!
【好評発売中】

『未来』
著/湊かなえ





コメント