今回は、藤岡陽子さんの『春の星を一緒に』という小説を紹介します!
「ここで死ぬのを待つんですね」
その言葉に、あなたはどう答えますか?
藤岡陽子さんの最新作『春の星を一緒に』は、緩和ケア病棟という“命の終わり”と向き合う場所を舞台に、看護師として、母として、そして一人の女性として生きる主人公・奈緒の姿を描いた物語です。
死と隣り合わせの現場で、なお人は「生きる」ことを諦めない。
そんな日々の中で紡がれる、静かで力強い希望の物語に、私は何度も涙をこぼしました。
このブログでは、奈緒と息子・涼介の親子の絆、医師・三上との心の交流、そして緩和ケアという医療の現場が教えてくれる“命の尊厳”について、じっくりと綴っていきます。
読後、きっとあなたも「死は敗北ではない」と思えるはずです。
どうか最後まで、この物語の温もりに触れてください。

死と向き合う医療現場で紡がれる母と子の絆
『春の星を一緒に』
著者 :藤岡陽子
ページ数:360ページ
あらすじ
奈緒(40歳)はシングルマザーの看護師として涼介と寄り添い生きてきた。
その涼介も高校生、進路を考える年齢に。そんな折、大きな転機が訪れる。
敬愛する医師三上の誘いもあり、思い切って東京の緩和ケア病棟で働くこととなる。
死を間近に見つめる毎日の中、その瞬間まで幸せに生ききり希望を持てる最期を模索し続ける奈緒。
一方、涼介は強く大きい夢を抱く。それは奈緒の夢でもある。
母子の夢の行方、そして三上と奈緒のこれからは・・・・・・。
(Amazonより)
見どころ
死を待つ場所ではなく生きる場所
物語の冒頭で患者が口にする「ここで死ぬのを待つんですね」という言葉は、読者の心を強く揺さぶります。
この問いに対して、主人公・奈緒が「いいえ、違います。私たちは生きるためのケアをしています」と答える場面は、緩和ケアの本質を端的に示しています。
緩和ケア病棟は、治療の限界を迎えた患者が最期まで人間らしく、尊厳を持って生きるための場所です。
死を前提としながらも、そこには「生きることの意味」を問い直す時間が流れている。
藤岡さんは、看護師としての実体験をもとに、医療の現場にある“静かな闘い”をリアルに描いています。
看護師・奈緒の視点から描かれる「命の現場」
主人公・川岸奈緒は、シングルマザーとして息子を育てながら、看護師として働く女性です。
彼女の視点で描かれる医療現場は、単なる職場ではなく、命と向き合う場所であり、感情が揺れ動く人間ドラマの舞台です。
患者の急変に対応する緊迫した場面では、医療従事者の冷静さと焦りが交錯し、読者はまるで現場に立ち会っているかのような臨場感を味わいます。
一方で、亡くなった患者の持ち物が「突如存在感を増す」という描写には、看護師としての繊細な感受性が滲み出ています。
命の終わりに立ち会う者だけが知る、静かな余韻がそこにはあります。
母としての奈緒と、息子・涼介の進路をめぐる葛藤
物語のもう一つの軸は、奈緒と高校生の息子・涼介との関係です。
涼介が突然「医学部に進学したい」と言い出す場面は、読者に驚きと感動を与えます。
偏差値50前後の高校に通う涼介が、京都大学や大阪大学の医学部を志望するという展開は、現実的には厳しい挑戦です。
しかし、涼介の強い意志と、母・奈緒の戸惑い、そして担任教師とのやり取りを通して、「夢を持つことの意味」「親が子にできる支援とは何か」が深く掘り下げられていきます。
学費の問題、学力の壁、そして親子のすれ違い——
それらを乗り越えようとする姿が、読者の心に強く残ります。
医師・三上との関係に見える、奈緒のもう一つの顔
奈緒は看護師であり、母であり、そして一人の女性でもあります。
物語の中で、彼女が医師・三上に抱く淡い恋心が描かれることで、読者は奈緒の人間らしさに触れることができます。
「凪いだ海を眺めている時のような幸福感」という表現は、奈緒の心の静けさと温かさを象徴しています。
医療現場の厳しさの中で、誰かを想う気持ちがあることは、彼女が“生きている”証でもあります。
三上の誘いで東京の緩和ケア病棟へと移る決断も、奈緒の人生の転機として描かれ、物語に深みを与えています。
亡くなる瞬間まで、人は幸せを感じることができる
この作品の根底に流れるテーマは、「死は敗北ではない」という考え方です。
緩和ケア病棟での経験を通して、奈緒は「亡くなる瞬間まで、人は幸せを感じることができる」と確信するようになります。
それは、患者が最期まで人とつながり、愛され、寄り添われることで得られる幸福です。
そして、その幸福は、残された人々にとっても「希望」となり得る。
死を描きながらも、そこにある“生の輝き”を見つめる藤岡さんの筆致は、読者に深い感動を与えます。
読者の口コミ
【この作品が合う人の口コミ】
・前作未読でも感動できた
『満天のゴール』を読んでいなくても物語がしっかり成立していて、深いテーマに引き込まれた。
・命の尊厳に心打たれた
緩和ケアの現場を通して「死は敗北ではない」という考え方に深く共感。読後に希望が残った。
・涙が止まらなかった
母子の絆、医療現場のリアル、そして涼介の進路への決意に胸が熱くなり、一気読みした。
・医療従事者として共感
看護師としての描写がリアルで説得力があり、現場の空気を思い出して感情が揺さぶられた。
【この作品が合わなかった人の口コミ】
・期待していた医療描写が少なかった
緩和ケアの看護をもっと深く描いてほしかったが、家庭の話が中心で物足りなかった。
・登場人物の描き方に違和感
主人公側が“正義”として描かれすぎていて、対立する人物が一面的に見えた。
・感情移入できなかった
家族の描写が自分の経験と合わず、物語に入り込めず冷めた気持ちで読了。
・テーマが散漫に感じた
母子の進路問題、恋愛、医療現場と盛りだくさんすぎて、焦点がぼやけてしまった印象。
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『春の星を一緒に』
著者:藤岡陽子



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