今回は、雫井脩介さんの『クロコダイル・ティアーズ』という小説を紹介します!
「その涙は本物か、それとも演技か――。」
夫を殺された若き未亡人・想代子。
犯人は彼女の元恋人でした。
そして、法廷で語られた「殺すよう頼まれた」という一言が、家族の心に深い疑念を刻みつけていきます。
物語の舞台は、代々続く老舗陶磁器店。信頼が崩れ、家族が壊れていく様子は、まるで静かに進行する心理の地震のようです。
誰が本当のことを語っているのか、誰が嘘をついているのか――
その答えは、最後まで明確には示されません。
雫井脩介さんの『クロコダイル・ティアーズ』は、単なるサスペンス作品ではありません。
人間の心の奥底に潜む「疑うことの恐ろしさ」を描いた、読後に深い余韻を残す一冊です。
あなたは、想代子を信じることができるでしょうか。

疑心暗鬼が生む心理サスペンス
『クロコダイル・ティアーズ』
著者 :雫井脩介
ページ数:400ページ
あらすじ
愛する息子が殺された。
犯人として逮捕されたのは、息子の妻・想代子の元恋人。彼は判決後「想代子に殺人を指示された」と発言する。
計画を企てたのは、嫁なのか。家族ゆえに問い質せない不信を前に、一家は疑心暗鬼の渦に呑まれていく。
ベストセラー作家が描く、究極のサスペンス。
(Amazonより)
見どころ
疑心暗鬼が生む“真実”の揺らぎ
この作品の最大の魅力は、「疑うこと」そのものが物語を動かす原動力になっている点です。
殺人事件の犯人が「妻に唆された」と証言したことで、家族の中に疑念が芽生えます。
とくに義母・暁美とその姉・東子の視点から語られる想代子像は、どこか不気味で、何を考えているのか分からない存在として描かれます。
しかし、読者はその“疑う視点”に引き込まれながらも、次第に「本当に彼女は悪女なのか?」という問いに揺さぶられていきます。
疑いがあるだけで人は変わってしまう。
善意も信頼も、疑念の前では簡単に崩れてしまう。そんな人間の脆さが、物語全体に重くのしかかっています。
語られない想代子の内面が生む“読者の試練”
物語の大半は、想代子以外の人物の視点で進みます。
彼女の本音や感情は直接語られず、周囲の人々の目を通してのみ描かれるため、読者は常に「想代子は何者なのか?」という謎に向き合うことになります。
この構成は、読者自身の価値観や先入観を試す仕掛けでもあります。
「したたかで計算高い女」と見るか、「ただ懸命に生きている女性」と見るか。
読者の見方によって、物語の印象は大きく変わるのです。
そして最後にようやく語られる想代子の視点。
そこに描かれる彼女の姿は、白とも黒とも言えない“グレー”な存在。読者はその曖昧さに戸惑いながらも、どこか納得してしまう。
まさに「クロコダイル・ティアーズ=嘘泣き」というタイトルが示すように、真実は涙の奥に隠されているのです。
家族という密室で起こる心理サスペンス
舞台は老舗陶磁器店を営む一家。閉ざされた家族という空間の中で、疑念が広がり、関係が崩れていく様子は、まるで密室劇のような緊張感があります。
嫁・姑・叔母・夫・義父といった複雑な人間関係が絡み合い、それぞれの立場から見える“想代子像”が異なることで、読者は何度も視点を揺さぶられます。
とくに義母・暁美の心理描写は秀逸で、息子を失った悲しみよりも、嫁への疑念に囚われていく姿は、読者に強い不快感と共感を同時に抱かせます。
家族という最も近しい関係だからこそ、疑いが深く、そして破壊的になる。そんな人間の業が、物語の根底に流れています。
白い花の意味するもの
ラストで語られる「グレーの世界に咲く白い花」という表現は、作品全体の象徴とも言える一節です。
想代子は白なのか黒なのか。読者の多くが「白だった」と感じながらも、「でも…」という余韻を残します。
それは、彼女が意図的に何かを仕掛けたわけではないけれど、結果的にすべてを手に入れてしまったから。
無垢であることが、時に最も強かな武器になる。そんな逆説的なテーマが、この作品には込められています。
読者の口コミ
【この作品が合う人の口コミ】
・タイトルの意味が効いている
“クロコダイル・ティアーズ=嘘泣き”という言葉が物語全体に重なり、印象的だった。
・心理描写が秀逸
登場人物の感情の揺れや疑念の広がりがリアルで、読んでいて引き込まれた。
・想代子の曖昧さが魅力
白とも黒とも言えない主人公の描き方が深く、読後に考えさせられる。
・視点の切り替えが面白い
義母・叔母・父など複数の視点から語られることで、人物像が多面的に見えてくる。
【この作品が合わなかった人の口コミ】
・サスペンスとしては弱い
事件の謎解きよりも心理描写が中心で、ミステリーを期待して読むと肩透かし。
・スッキリしない結末
最後まで読んでも真相が曖昧で、モヤモヤが残った。
・○○としての決着が欲しかった
想代子が〇〇であってほしいという期待が裏切られ、物足りなさを感じた。
・登場人物に共感できない
義母や叔母の言動が過剰で、読んでいて不快だった。
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『クロコダイル・ティアーズ』
著者:雫井脩介



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