今回は、安壇美緒さんの『ラブカは静かに弓を持つ』という小説を紹介します!
「スパイが弓を構えるとき、音は嘘をつけない。」
――著作権と音楽という、一見相容れない世界が静かに交わるとき、人はどこまで本音で生きられるのか。
大手音楽教室に潜入する“スパイ”という設定に心をくすぐられながら、物語はただの調査劇には留まらず、チェロを通じて過去と心に触れていく静かな再生の物語へと変容していく。
読めば読むほど、音楽が人をほどき、関係を編み直し、沈黙に意味を与えていくのを感じるはず。
ラブカのように静かに、しかし確かな存在感で心に残る1冊。
あなたの心の深海にも、きっと音が届くはず――。
続きをぜひ、読んでみてください。

音楽小説の新境地
『ラブカは静かに弓を持つ』
著者 :安壇美緒
ページ数:312ページ
あらすじ
武器はチェロ。
潜入先は音楽教室。
傷を抱えた美しき潜入調査員の孤独な闘いが今、始まる。
『金木犀とメテオラ』で注目の新鋭が、想像を超えた感動へ読者を誘う、心震える“スパイ×音楽”小説!少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇し、以来、深海の悪夢に苛まれながら生きてきた橘。
ある日、上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。
目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。
橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉のもとに通い始める。
師と仲間との出会いが、奏でる歓びが、橘の凍っていた心を溶かしだすが、法廷に立つ時間が迫り……
(Amazonより)
見どころ
音楽が心をほどいていく過程
物語の中心にあるのはチェロ。主人公・橘は過去のトラウマによってチェロを触れなくなっていましたが、音楽教室のレッスンを通して再び音楽に心を開いていきます。
音楽はただの娯楽ではなく、彼にとって精神的な再生の鍵となり、自分自身を知る手段として機能しています。
チェロの演奏を描写する文体は繊細で、音の質感が行間から伝わってくるようです。
特に浅葉先生が弾く“雨の日の迷路”などの場面では、演奏がまるで映像のように想像できるほど豊か。
音楽の美しさだけでなく、演奏に宿る感情が丁寧に描かれている点が心を打ちます。
スパイであることの葛藤と、その代償
橘の任務は著作権団体による音楽教室への潜入調査。
仕事とはいえ、信頼関係のある人々を裏切らざるを得ない立場に苦しみます。
バレるかどうかの緊張感は物語のスリルとして機能しながら、同時に“人としてどうあるべきか”という内面的な葛藤を浮き彫りにしていきます。
社章を外していたにもかかわらず、バレてしまうシーンの緊迫感は秀逸。
それによって築き上げた関係が一度壊れたにもかかわらず、橘がその事実と正面から向き合おうとする姿勢が印象的です。
これは単なるスパイ物ではなく、人間の弱さと再生を描いた作品として強い読後感を残します。
人との繋がりが生まれる瞬間の静かな力
橘が音楽教室で出会う人々は、それぞれに個性があり、彼の心に少しずつ影響を与えていきます。
特にチェロ講師・浅葉との関係は物語の軸とも言え、彼とのやりとりが橘に“人と関わることの喜び”を思い出させます。
信頼を失った後も、橘は自ら音楽教室の門を叩き、浅葉の元で再びチェロを習うことを選びます。
この描写が象徴するのは「信頼は壊れても、希望は終わらない」というメッセージ。
関係が修復可能であることを描いている点が、多くの読者の心に響くのでしょう。
ラブカという象徴の意味
タイトルにもなっている“ラブカ”は深海魚であり、物語に登場するスパイ映画の主題曲にも関わる象徴的な存在です。
このラブカは静かで、深海にひそむようなイメージがあり、橘自身の孤独や心の深淵を表しているようです。
ラブカが“静かに弓を持つ”というタイトルの言葉は、美しさと恐れ、沈黙と音楽の対比を見事に表していて、読了後にはこの一文の重みを噛みしめたくなるような深みがあります。
読者の口コミ
【この作品が合う人の口コミ】
・苦しい展開を経て再生へと向かうストーリーに勇気づけられた。
・チェロの演奏シーンにリアルな臨場感があり、音楽の魅力が伝わってくる。
・過去のトラウマや孤独を乗り越える主人公の姿に心を動かされた。
・派手な展開は少ないが、言葉の繊細さや感情の余韻に惹かれる。
【この作品が合わなかった人の口コミ】
・音楽業界の背景や法律的な話が分かりにくく、やや専門的だった。
・感情描写が中心で、テンポの遅さに入り込めなかった。
・橘の思考や行動が理解しにくく、感情の動きが掴みにくかった。
・もっとドラマチックな展開を想像していたが、静かすぎる印象。
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『ラブカは静かに弓を持つ』
著者:安壇美緒



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