医療では人は救えない?『エピクロスの処方箋』あらすじ!死と向き合う医師が語る幸福とは

今回は、夏川草介さんの『エピクロスの処方箋』という小説を紹介します!

「人を救うのは、医療ではない。人なんだ。」

この一言にが深く胸の奥に響いた。

夏川草介さんの『エピクロスの処方箋』は、医療小説というより、人生そのものに向き合う物語だと思う。

病と向き合う人たち「患者」「医師」「家族」それぞれの立場から語られる言葉が、どれもまっすぐで、優しくて、時に苦しくて。

読んでいるうちに、自分自身の「生き方」や「大切な人との時間」について、自然と考えさせられていた。

舞台は京都。
静かな町並みの中で、医師・雄町哲郎が過ごす日々は、派手さはないけれど、確かに美しい。
その静けさの中に、揺るぎない強さがある。

このブログでは、『エピクロスの処方箋』を読んで感じたことを、物語の奥にある想いや、登場人物たちの言葉を通して、少しずつ紐解いていきたい。

読んだ人にも、これから読む人にも、何かが届くように。

死と向き合う医師が語る幸福とは
『エピクロスの処方箋』

著者:夏川草介
ページ数:360ページ

あらすじ

大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望されながらも、母を亡くし一人になった甥のために地域病院で働く内科医の雄町哲郎。

ある日、哲郎の力量に惚れ込む大学准教授の花垣から、難しい症例が持ち込まれた。
患者は82歳の老人。

それは、かつて哲郎が激怒させた大学病院の絶対権力者・飛良泉寅彦教授の父親だったーー。

「エピクロスが主張している快楽の本質は、何よりも『精神の安定』のことなんだ。だから自分は快楽主義者だと言う奴に出会ったら十分に注意することだ。

心の平静を求めているのか、ひたすら快楽を求めているのか、こいつは全く別物だよ」(本文より)

エピクロス……古代ギリシャの哲学者。快楽主義を提唱した。
(Amazonより)

見どころ

医療と哲学が交差

病を治すことだけが目的ではなく、「人がどう生きるか」「どう死に向き合うか」という問いが、物語の根っこにしっかりと根を張っている。

主人公の雄町哲郎は、医師でありながら、治療の先にある「幸福に生きること」を見つめ、死を避けるのではなく、死とともに生きる。
その姿勢が、読んでいるこちらにも問いかけてくる。

「人を救うのは医療ではない。人なんだ」

この言葉には、医療の限界を受け入れたうえで、人の温もりこそが救いになるという深い信念が込められている。

医療従事者だけでなく、誰かのそばにいるすべての人に響く言葉だと思う。

登場人物の哲学と成長

続編となる本作では、原田病院の面々に加えて、南先生や花垣准教授など新たな人物が登場する。

それぞれが異なる価値観を持ち、ときにぶつかり合いながらも、患者に向き合う姿勢には共通して「誠実さ」がある。

マチ先生の「医療というものを根本的に信頼していない」という言葉は、医療の万能性を疑いながらも、患者に寄り添うことを諦めない姿勢を示していて印象的だった。

その考え方は、あのブラックジャックの本間丈太郎医師の「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね」というセリフにも通じるものがある。

医師としての謙虚さと覚悟が感じられる。

生と死の間にある「日常」の尊さ

この作品では、死に向かう患者との時間が多く描かれている。

けれど、そこにあるのは悲壮感ではなく、日常の積み重ねの尊さ。

洋食店の店主が、妻の最期を前に「店を閉める」と語る場面で、哲郎が「亡くなる瞬間に立ち会うことよりも、生きている時間をどう寄り添うかが大切」と言う。

その言葉に、はっとさせられる。

死を見つめることで、今をどう生きるか。
読んでいるうちに、自分の時間の使い方を見直したくなる。

京都という舞台

物語の舞台は京都。
路地裏の病院、季節の移ろい、そして「長五郎餅」などの銘菓の描写が、作品全体に穏やかな空気をもたらしている。

医療の厳しさの合間に、ふっと肩の力が抜けるような場面がある。
登場人物たちの揺らぎや、患者との対話の余白を際立たせていて、読書体験としてとても豊かだった。

読者自身への問いかけ

「幸福とは何か」「快楽とは何か」「人はどう生きるべきか」

そんな問いが、登場人物の言葉や行動を通して感じる。

エピクロスの「快楽主義」が示す三つの要素

精神の安定、肉体の苦痛のなさ、孤独ではないことに著者は「人とのつながり」を加えている。
それは、今を生きる私たちにとって、力強い処方箋になる。

この本を読んで、自分の人生を少しだけ見つめ直したくなる。そんな一冊だった。

読者の口コミ

【この作品が合う人の口コミ】

・マチ先生の言葉が人生の指針になるようで、何度も読み返したくなる作品。

・「医療では人は救えない。人が人を救う」この言葉に深く共感した。哲学的な問いが心に残る。

・死と向き合う静かな時間の描写が美しく、涙が自然にこぼれた。読後の余韻が長く続く。

・京都の風景や甘味の描写が癒しになり、物語の空気感に浸れるのが心地よい。

【この作品が合わなかった人の口コミ】

・前作と似た構成で、少しパターン化してきた印象。新鮮味に欠ける部分も。

・登場人物の言動が理想的すぎて、現実味に欠けると感じた。特に甥の描写が「出来すぎ」。

・哲学的な内容が多く、医療小説として読むにはやや難解だった。

・展開が穏やかすぎて、刺激やドラマ性を求める人には物足りないかも。

その他の人気作品

スピノザの診察室

雄町哲郎は京都の町中の地域病院で働く内科医である。

三十代の後半に差し掛かった時、最愛の妹が若くしてこの世を去り、 一人残された甥の龍之介と暮らすためにその職を得たが、かつては大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕医師だった。

哲郎の医師としての力量に惚れ込んでいた大学准教授の花垣は、愛弟子の南茉莉を研修と称して哲郎のもとに送り込むが……。
(Amazonより)

神様のカルテ

栗原一止(いちと)は信州にある「24時間、365日対応」の病院で働く、29歳の内科医である。

ここでは常に医師が不足している。

専門ではない分野の診療をするのも日常茶飯事なら、睡眠を3日取れないことも日常茶飯事だ。妻・ハルに献身的に支えられ、経験豊富な看護師と、変わり者だが優秀な外科医の友人と助け合いながら、日々の診療をなんとかこなしている。

そんな栗原に、母校の医局から誘いの声がかかる。

大学に戻れば、休みも増え愛する妻と過ごす時間が増える。

最先端の医療を学ぶこともできる。だが、大学病院や大病院に「手遅れ」と見放された患者たちと、精一杯向き合う医者がいてもいいのではないか。

悩む一止の背中を押してくれたのは、死を目前に控えた高齢の癌患者・安曇さんからの思いがけない贈り物だった。
(Amazonより)

本を守ろうとする猫の話

「お前は、ただの物知りになりたいのか?」

夏木林太郎は、一介の高校生である。

幼い頃に両親が離婚し、さらには母が若くして他界したため、小学校に上がる頃には祖父の家に引き取られた。以後はずっと祖父との二人暮らしだ。

祖父は町の片隅で「夏木書店」という小さな古書店を営んでいる。

その祖父が突然亡くなった。面識のなかった叔母に引き取られることになり本の整理をしていた林太郎は、書棚の奥で人間の言葉を話すトラネコと出会う。

トラネコは、本を守るために林太郎の力を借りたいのだという。

お金の話はやめて、今日読んだ本の話をしよう――。
(Amazonより)

読んでみた感想(ネタバレ注意)

医療小説としての側面はもちろんあるけれど、それ以上に「人がどう生きるか」「どう死に向き合うか」という問いを強く感じる。

主人公の雄町哲郎は、ただ病気を治すだけの医師ではない。
患者の人生に寄り添い、今この瞬間をどう過ごすかを大切にしている。

「人を救うのは、医療ではない。人なんだ」
この言葉がこの先も自分を支えてくれる気がした。
反対に誰かの支えになりとも思わされる。

医療の限界を受け入れたうえで、それでも人と人との関わりが救いになるという考え方に、深く共感できる。

登場人物たちもそれぞれに哲学を持っていて、時にぶつかりながらも、誠実に患者と向き合っている。

マチ先生の言葉や、南先生とのやりとり、龍之介くんとの関係など、どれも温かくて、どこか懐かしい。

死に向かう場面が多いのに、悲壮感はなくて、むしろ「今をどう生きるか」に焦点が当たっている。
誰かのそばにいること、声をかけること、笑って過ごすこと。
そんな当たり前のことが、どれほど大切かを教えてくれた。

夏川草介さんの作品には、医師としての経験だけじゃなく、人としての深い思索が込められている気がする。

だからこそ、読んでいて心が動く。そんなふうに思える一冊。

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エピクロスの処方箋
著者:夏川草介

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